【入門】相対性理論を東大生が解説(固有時間と静止エネルギー)
この記事では、大学生でも理解できるように相対性理論を説明していきます。
特に今回は、あの有名な式である\( E = m c^{2} \)の導出について考えていきます。
ローレンツ変換を理解していない方は下記を参考にしてください
*(iphone・Androidの方へ)数式はスクロール可能です。
相対性理論入門:不変量
ローレンツ変換に対して不変な量がどのように役に立つのかまず考えていきましょう。
実は、不変量を使ってどんな慣性系でも使える時間を作ることができます。
その考え方を習得しましょう。
宇宙共通の時間をどうやって決めるのか
ある慣性系から別の慣性系へローレンツ変換する場合は、以下のような変換を受けます。
$$ x^{\prime} = \frac{x ~- v t}{ \sqrt{ 1 ~- \frac{v^{2}}{c^{2}}}}~~,~~ t^{\prime} = \frac{ – v ~ x/c^{2} }{ \sqrt{ 1 – \frac{v^{2}}{c^{2}}}} $$
*具体的に\(x\)座標に等速直線運動へ移動する慣性系への変換を考えています
ここで問題が生じてしまいます
つまり、この変換では各慣性系ごとに時間と空間を同時に変換してしまうので共通の時間を決めることは困難です。
なので、考え方を変えて世界の各点ごとに固有の時計を用意して各々で時間を計測するべきであるという考え方が生まれそうです。
ここで、『ローレンツ変換』で説明した不変量が役に立ちます。
ローレンツ変換の不変量
ローレンツ変換に置いて以下の量は不変に保たれます。
わからない方は下記を参考にしてください
当然ですが、この不変量にマイナスを取って微小量にしたものも不変量になりますね。
$$ (d \tau)^{2} = ( d \omega )^{2} – (dx)^{2} – (dy)^{2} – (dz)^{2} $$
この量は、ローレンツ変換に対して不変な量なので、
新しい時間を、\(d \tau\)として、各慣性系に固有の時間として考えることにしましょう
この\(d \tau\)を固有時間といいます。
固有時間の定義から、動いている物体ほど時間が遅く進むことがわかります。
この時点で時間が絶対的な量ではなくなり、各点ごとに異なる時計が設置されるというアイデアが実現されました。
二点間の距離の二乗を\(ds\)^{2} \)とする特殊な空間をミンコフスキー空間といいます。
また、ミンコフスキー空間のベクトル\(V\)を以下のように書くと
$$ V = ct \overrightarrow{e_{0}} + x \overrightarrow{e_{1}} + y \overrightarrow{e_{2}} + z \overrightarrow{e_{3}} $$
この規定ベクトルは以下のような内積規則を持ちます
物体の運動はミンコフスキー空間の中の線分で表され、これを世界線といいます
相対性理論入門:相対論的力学
ローレンツ変換を行うとニュートン力学の形が変化してしまうので、ローレンツ変換をしても物理法則が変わらない形にニュートン力学を拡張していきましょう。
その拡張の結果あの有名な関係式\( E = m c^{2} \)を得ることができます。
驚くかもしれませんが、相対性理論を考えるための二つの原理である『光速度不変の法則』と『特殊相対性原理』を考えると、今までのニュートン力学は完成形ではなく光速を無限と考えた時の近似の元で成り立つ理論だったのです。
なので、本当の意味で正しい力学を構成する必要があります。
こうして構成された力学が相対論的力学です。
4元速度の導出
ローレンツ変換では、時間も空間も同時に変換してしまう変換なので速度を通常の定義で考えるのはまずそうですね。
なので、速度を新しく固有時間に対する変化として定義することにしましょう。
$$ u^{0} \equiv \frac{d \omega }{d \tau}~~,~~ u^{1} \equiv \frac{d x}{d \tau} $$
$$ u^{2} \equiv \frac{d y }{d \tau} ~~,~~ u^{3} \equiv \frac{dz}{d \tau} $$
このように新たに定義した速度を4元速度といいます。
*\( u^{0} \)や\( u^{1} \)は〜乗を表しているわけではなく、ただの添字です。
相対性理論では、よくこのような書き方をするので慣習に合わせました。
4元速度を具体的に計算しよう
後の計算を楽にするために \(\frac{ d \omega }{d \tau } \) を計算していきます。
\( d \tau \)は以下のような式を満たします。
$$ (d \tau)^{2} = ( d \omega )^{2} ~- ( dx )^{2} – (d y )^{2} – ( d z )^{2} $$
また、\( d \omega = c dt \)の性質を用いて以下のように式変形します。
\( v_{x}^{2} + v_{y}^{2} + v_{z}^{2} = v^{2} \)より以下のように4元速度の第一成分を求めることができます。
$$ u^{0} = \frac{ d \omega }{d \tau} = \frac{1}{ \sqrt{ 1 – \frac{v^{2}}{c^{2}}}} = \gamma $$
同様に4元速度の他の成分を計算すると以下のように表せます。
$$ u^{1} = \gamma \frac{v_{x}}{c} ~~,~~u^{2} = \gamma \frac{v_{y}}{c}~~,~~u^{3} = \gamma \frac{v_{z}}{c} $$
ここで注意したいのは4元速度が無次元量になっているところです。
なので、4元運動量を考えるときは次元を運動量と同じにするために光速\(c\)を掛けます(光速をものさしにして運動量を速度を測るということ)
また、4元速度を用いて4元運動量も以下のように定義できます。
$$ p^{0} \equiv m c u^{0}~~,~~ p^{1} \equiv m c u^{1} $$
$$ p^{2} \equiv m c u^{2} ~~,~~p^{3} \equiv m c u^{3} $$
4元運動量をニュートン力学の速度で書き表す
ニュートン力学との関係を明らかにするために、ニュートン力学の速度\(v\)を用いて4元運動量を書き表しましょう。
求めた4元速度を4元運動量に代入しましょう。
$$ p^{0} \equiv m c u^{0} = \gamma m c $$
その他の成分は、
$$ p^{1} = \gamma m v_{x}~~,~~p^{2} = \gamma m v_{y}~~,~~p^{3} = \gamma m v_{z} $$
ここで、\( m^{\ast} \equiv \gamma m \)とおくと4元運動量は以下のように書くことができます。
これで、ニュートン力学のような形式で書くことができます。
質量とエネルギーの等価性
ここで\( p^{0} \)と光速\(c\)の積について考えてみましょう。
$$ c p^{0} = c^{2} \gamma \simeq mc^{2} + \frac{1}{2} m v^{2} $$
3項目の式変形で以下のようなテイラー展開を行なっています。
$$ \gamma = \sqrt{ 1 – \frac{v^{2}}{c^{2}} } \simeq 1 – \frac{1}{2} \left( \frac{v^{2}}{c^{2}} \right) $$
この結果から、第二項はニュートン力学で現れるエネルギーが現れ、第一項には、物体の速度を\(v = 0 \)としても0にならないエネルギーのような項が現れました。
そして\( c p^{0} \)が相対論的力学のエネルギーとなります。
$$ E \equiv c p^{0} $$
さらに、物体が0の時の相対論的力学のエネルギーは以下のようになります
$$ E = m c^{2} $$
静止していても生じるエネルギーなので、この項を静止エネルギーといい、質量とエネルギーの同等性を示す式になっています。
ニュートン力学との整合性
光速が無限に速い近似が使える場合は、ニュートン力学との整合性が取れるということを確認してみましょう。
相対論的力学では、運動量は以下のように書くことができます。
$$ P^{1} = m^{\ast} v_{x}~~,~~ P^{2} = m^{\ast} v_{y}~~,~~P^{3} = m^{\ast} v_{z} $$
光速が無限の極限では、相対論的質量は以下のように計算できます。
$$ m^{\ast} \equiv \frac{m}{\sqrt{ 1 – \left( \frac{v^{2}}{c^{2}} \right) }} \rightarrow m $$
となり運動量も光速が無限大の極限ではニュートン力学と一致することが確かめられました。
参考資料
参考サイト
参考文献
まとめ
ローレンツ変換でも法則が変わらないようにニュートン力学を拡張することであの有名な質量とエネルギーが等価であるという\( E = m c^{2} \)とう式を導出できました。
次回は、量子力学と相対性理論について考えていきます。
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